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568 ■結局、「勝つ仕組み」を勉強した人が生き残る

遠い昔の話。私の師匠はプロの馬券師だった。そのころは単・複、枠連・馬連の全盛時代。彼(師匠)は何を勉強していたかというと、「競馬四季報」をよく読んでいた。

一度、彼の鞄にある四季報を見たことがある。驚いたことに、その本の角端は丸くなっておりボロボロだった。何度も頁をめくった痕跡である。おそらくほとんどの馬の出走サイクルを覚えていたのではないだろうか。とにかく記憶力は抜群で、競走馬のことは何を聞いても応えてくれるほどの豊富な知識を持っていた。

プロ馬券師はつねに全レースの馬券を買っていると読者諸兄はお思いでしょうが、これが違うのだ。朝から競馬場につめてはいるものの、席に座って鞄から取り出す本は、なんと四季報ならぬ“推理小説”だった。

レースそっちのけで推理小説を読みふける彼の姿は、競馬場には似つかぬものだった。こちらも面白くないので、自分で競馬新聞を見ながら馬連の数字をメモしていると、突然、「まだ、まだ」、とつぶやく。彼はまったくの“寡黙の人”で言葉数は極端に少なかった。

「よし、やるか」と言ったのは、午後の8レースになってから。馬連4点を各2000円。これを買いに行くのは、私の役目だった。こうして小僧の使いっ走りをしながら、師匠の馬連の数字を手帳に書き込んでは、私は勉強を繰り返した。

彼の狙いは馬連の万馬券のみ。その日の流れを読み、勝負レースは来るまで待つ。いい加減なレースには手を出さない。そして、帰りは必ず食事に誘ってくれたのだが、支払いをする彼の財布は充分すぎるほど膨らんでいた。

その彼も、すでに他界された。時折、あの頃をなつかしく想い起す。

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2007.09.05
by alleysan | 2007-09-05 22:14 | 競馬 | Comments(0)


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